5億円の生命保険に加入する方法はあるか

生命保険は資産のない人だけが加入するものではない

生命保険というのは、本人に万が一のことがあったときに家族を金銭的にサポートする、という目的があります。そのため、生命保険で儲ける、という発想は日本ではあまり一般的ではありません。遺産が十分あれば、金銭的なサポートは必要ないので、それゆえに資産のない人は生命保険は必要ないのでは、という意見もあります。

ただ、一つ言えることは資産がある場合、生命保険にご縁がなくなるのではなく、加入する生命保険の種類が少し変わってくる、ということです。詳しく見てみます。

生命保険の加入上限金額はどれくらいか

生命保険はたくさん入っていれば安心と考える人も多いですが、そもそもどのくらいの金額まで生命保険に入ることができるのでしょうか。

答えは生命保険会社による、です。

というのも、生命保険会社は「加入者の収入や資産、逸失利益などの観点から、保障として妥当性のある(過大ではない)金額について、適切に判断や確認をすることと」とされています。

あとは、死亡保障がついている場合、「告知書や健康診断を通じて健康状態の観点から、引受可能であること」が重要です。健康診断は、通常は保険会社のある、現地国で行う必要があります。スキューバダイビングや山登りなど、ややリスクの高い趣味があると考慮されることもあります。

死亡保障の保険の場合、

日本国内では概ね3億円が上限

になっており、それだけあれば「残されるものに対するサポートという意味で過剰でない」と常識的に判断できるだろう、というものです。過剰な保険に加入する場合、保険金目的での殺人を助長する、とも考えられるからですね。1億円以上の場合は告知書の提出だけでなく健康診断を求められたり、事前申請や契約意思確認が入念に行われる傾向があります。

5億円の生命保険に加入する方法はあるか

常識的に3億円が上限だったとしても、個々人の事情によっては、3億円では足りない、というケースはありますよね。ただ、合理的な理由があれば不可能ではありません。

例えば、一代で急成長したオーナー企業社長の場合です。

社長がいなくなってしまうと、企業は方向性や信頼を失い、会社と従業員に不安が生まれる場合です。その場合、法人で生命保険契約を行い、被保険者を社長とすることで、残された者に対しては、保険金を残すことができます。もちろん、保険金があっても、経営が、、ということはあるでしょうが、大きな助けになることは想像できます。その場合は、5億円ないしは10億円といった生命保険に加入することはできるでしょう。

それ以外だと、次に示す貯蓄型生命保険が検討対象になってきます。

富裕層が生前対策で取り組むのは貯蓄型生命保険

生命保険には定期保険タイプと終身保険タイプがあります。一般には、定期保険タイプは「掛け捨て」であり、この手の保険は資産ができるまでの繋ぎのような役割があります。したがって、富裕層が選択することは多くはありません。

一方、終身保険タイプの場合、俗に「貯蓄型生命保険」と言われるものがあり、数年経てば支払保険料を解約返戻金が上回る、ブレークイーブンに達し、その後も加入し続けることで、資産を増やすことが可能になっています。もちろん、投資ではありませんので、爆発的に資産が増えることはありませんが、年率数%で複利で増えていくので、十分な「運用益」が確保できる、と考えることはできそうです。

1 オーナー法人から個人への資産移転

法人資産と個人資産では適用される税も異なるので、互いの行き来は慎重に行う必要があります。ただし、これについても合理的な事由がある場合は否定されるものではありません。例えば、退職金に保険証券での現物給付を充てる、などです。

一代で築いたオーナー企業では、なかなか社長が退職をしないことが起こりますが、次世代が育っている場合は、むやみに現職にしがみつかず、しっかりとした退職金を受け取って歯切れ良く去ることも大事です。退職金を解約返戻金で支払ってもいいですが、貯蓄型生命保険の場合は、保有していれば価値が増えますので、すぐに資金が必要ない人にとっては現物給付がメリットになるかもしれませんね。

2 個人での相続税対策

生命保険も解約返戻価値を持つので、”資産の一つ”であることは言うまでもありません。そのため、相続税の計算に影響を与えます。相続税対策の一つの目的は、対象資産の価値を下げることで節税を行うことですが、一方で、対象資産の価値を上げることで、相続税分をしっかりカバーするということも選択肢にはなります。

生命保険の場合、死亡証明書を保険会社に提供することで、キャッシュが入ってきますので、換金性という観点で、不動産などの資産に比べると安心感があります。過大な相続税負担に対しても、キャッシュで対応することができれば、その後時間をかけて不動産を処分する、といった心の余裕にも繋がります。

100億円の生命保険に加入できる可能性はあるか

富裕層の場合、数億円では資産のほんの一部になってしまう可能性はありますので、資産額に合わせた、数十億から100億円くらいの生命保険に入ることも不可能ではありません。その場合は、プライベートバンクでプレミアムファイナンスを受けることが一般的です。富裕層でなければ縁がないかもしれませんが、プレミアムファイナンスについては別稿にて紹介させていただいています。

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