進化するバミューダの保険市場

バミューダの保険は良好なトラックレコードをもつ

バミューダの保険産業は1970年代、1980年代に注目を浴び始め、その後は規制が整い、2000年代に隆盛期を迎えました。

9.11のテロやハリケーンのカトリーナなど、保険業界の苦悩を解決する場として国際的に受け入れられ、再保険などの形で巨大な保険リスクを組み替える場となりました。保険といえばバミューダといわれるほどに成長したのです。

バミューダがさらに注目されたのは2016年にEUのソルベンシー規制IIとの同等性を認められたときです。英国法のもと、法人税はゼロなので、企業にとっては魅力があり、数あるオフショア地域の中でも、世界をリードする保険/再保険のハブとして躍進しました。

バミューダにとっての逆風

ここまで注目されてきたバミューダですが、逆風がなかったわけではありません。

例えば、2017年に税源浸食濫用防止税(Base Erosion and Anti-abuse Tax、BEAT)をトランプ大統領が導入して以来、米系保険会社はバミューダからやや距離を置くようになりました。トランプ政策の多くは、国内への企業回帰を目指すものとなっていますが、それは製造業の工場だけでなく、保険会社をも対象に含めるものでした。

また、2019年初めにEUのタックスヘイブンブラックリストに載ったときは衝撃が走りました。(その後3ヶ月で迅速にルール変更を行い、リストからは除外されています。)

オフショアビジネスである以上、大国との関係を重視する必要性に随時晒されているということですね。

バミューダにとっての追い風

一方、2019年後半にはNAIC(National Association of Insurance Commissioners)から、相互司法権(Reciprocal Jurisdiction)として認定されたことは良いニュースでした。NAICは米国各州の規制・監督につき、効果的な手法に関する意見や、全米各州の保険規制の調整等を目的とした組織ですから、特別な資本要件等を課されることなく、バミューダで保険ビジネスができる、お墨付きをもらったようなものです。

2019年には、バミューダはカリブのFATF(Financial Action Task Force)によって、金融犯罪に対応するグローバルリーダーとして認定され、その後EFAC(Economic and Financial Affairs Council)からもEUの税務規則に沿ったホワイトリストに載ったのです。

また、2019年にはバミューダのInsurance Actへの修正により、Limited Purpose Insurersに関し、fully collateralised reinsurer class (Collateralised Insurers)とinnovation class(Class IIGB)の2つが加わり、また保険仲介業のカテゴリーもできました。

金融テックに関しては、バミューダの金融庁たるBermuda Monetary Authority (BMA)が保険テック会社が金融テクノロジーを、十分に管理された環境で、限定的かつ特定の期間において、一部の顧客にテストができるように、Insurance Regulatory Sandboxをローンチしています。

バミューダはより大きな保険リスクに対応する地域として活躍

昨今は、大災害債券(CAT債)などの保険リンク証券(ILS)あるいはキャプティブ保険で地位を高めています。

身近な保険においても自然災害の増加により保険料増が起こり始めていますが、そのリスクの多くは実は代替的リスク移転(Alternative Risk Transfer、ART)手法の発展により、バミューダに集まっているのです。代表例として、CAT債を取り上げると、これは本来保険会社や再保険会社が負うであろう保険リスクを一般投資家にも一部負ってもらうというスキームです。

もちろんリスクを負う代わりに比較的安定したリターン(概ね6%程度)を得ることが可能です。株式や債券といった伝統的資産とは異なるリスクリターンの性質を持つので、オルタナティブ資産の一つとして近年は注目されています。

ただ、過去にない大災害が連発した場合は元本返済が難しくなる可能性もあるので、リスクについてよく理解した、プロ投資家向けの金融商品ではあると思います。

日本人にとってのバミューダは

現状、日本の居住者を受け入れる保険会社はありませんが、海外信託、海外法人、あるいは海外在住日本人であれば、受け入れをしてくれる可能性があります。

巨額の保障が可能なユニバーサル保険もバミューダ特有なので、以前の記事でも触れたプレミアムファイナンスでも利用されています。

また、CAT債などは特定の金融機関を通じて個人に向けても提供されているようです。富裕層独特の保険につき、なかなか情報が手に入らないので、ブローカーが信用のおける人物か、また規制の変更がないかなど、十分に気をつけて利用することをお勧めします。

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