資産運用のコストを下げるにはどうしたらいいか

かつてほど金利が高くない今、期待リターンを高く持ち続けることは難しくなりました。過度なリスクテイクをせずに資産運用におけるリターンを確保するためには、資産運用におけるコストを削減することが最も近道であると言えるでしょう。では、どのように気をつけるとよいのでしょうか。

資産運用にかかっているコストとは?

近年では金利の低下により口座維持手数料をとること自体は少しずつ増えてきているようですが、銀行にお金を預けておくだけでコストがかかる、ということはあまり一般的ではありません。

一方で、資産運用は放っておけば儲かる、と勘違いしがちですが、正確に言えば何もしなければ手数料で損をするところがスタート地点となっていることがあります。資産運用を行なっていると、実際にはあるこのコストが運用損益とまるめこまれているので気付きづらいのです。

ご自身ではどうしようもないときがあるにはあるのですが、資産価格の上昇/下落を取り除いてかかるコストが大きすぎれば当然運用利益はありません。無益な運用を行わないよう、しっかりと吟味したいものです。

1 目に見える資産運用のコスト

売買手数料

株式などを売買するときに取られる手数料です。近年はネット証券も登場しており、上場証券であれば大きくはありません。投資信託はかつては5%程度が取られることも多かったですが、ノーロードと呼ばれる売買手数料なしの投資信託も増えています。また、機関投資家と同じ資産管理プラットフォームを使うことができればかなり安く抑えることができます。売買手数料とは運用そのものではなく、仲介の事務手数料として取られるので、基本的には外側で発生し、見えるコストとして認識されます。

投資一任費用

ファンドラップなど、運用資産の選択を第三者に委託する場合にかかる費用です。1〜2%程度が一般的でしょうか。ロボアドバイザーなども投資一任費用を徴収するケースが多いです。投資信託の管理の外側で発生するコストなので、見えるコストとして投資家から認識できます。

2 目に見えない資産運用のコスト

信託報酬/管理費用

株式や債券といった金融商品ではなく、投資信託のような管理運用が必要な金融商品に存在するコストです。売買手数料がないものを選んだ場合、管理費用が高くつくケースはあります。敷金や礼金のない賃貸物件を選ぶと賃料が割高になることがあるのと同じ理屈です。

投資信託は市場価格で取引をされるのですが、この市場価格には信託報酬/管理費用が既に含まれています。したがって、コストが高く運用益が出ていなければ、自然と市場価格自体が下がっていきます。投資家からすれば費用が目に見えませんが、気づいたら投資資産の価値が目減りしていた、ということになりかねません。

オファービッド

海外旅行をして両替を経験した人は分かると思いますが、売りと買いの価格には乖離があることが一般的です。アメリカに着いたときに10万円を米ドルに換えて、使うことないまま、帰りに米ドルを日本円に換えたらどうでしょう、為替変動がなかったとしても数万円減っていることに気づくでしょう。

ただ、オファービッドの場合は価格差だと理解されていて手数料だと思っている人はあまり多くありません。なので、手数料ゼロの両替カウンターを探して行くと、オファービッドが広く(売りと買いの価格差が大きく)実は損をしていることに気がつきません。

投資信託などの金融商品にも一般にはオファービッドがあります。金融市場が安定しているときにはオファービッドは狭く、逆に金融市場が乱高下するようであればオファービッドは広くなります。慌てて損切りするような局面では見えないコストでさらに資産を削られる、といったこともあるのです。

資産運用のコストを下げられるケース

資産運用のコストを下げる一番良い方法は、手数料の安い取引プラットフォームへ乗り換えることです。より多くの人が利用するプラットフォームほどより手数料が安いという傾向があります。このときに必要なのは【コストの横比較】です。

売買手数料の場合は意識すれば間違いなく下げることができるでしょう。また、オファービッドも改善可能ですが、プラットフォームにより得意な商品とそうでない商品があるので、全ての商品でオファービッドが改善されるかどうかは要確認です。

資産運用のコストを下げられないケース

資産運用のコストのうち、運用パフォーマンスを上げるために払っているコストは残念ながら下げづらいです。なぜなら、あなた自身の運用能力を補完するためにあなた自身が払う必要のあるコストだからです。

もしこの費用を下げたければあなた自身の運用能力を上げるしかありませんが、それほど簡単ではありません。投資一任費用はこれにあたります。より安く投資一任を請け負ってくれる場所を探すことは諦めてはいけませんが、費用を下げるとパフォーマンスが落ちることも想定しなければなりません。

信託報酬/管理費用については基本的には裏側で働く人の人件費です。したがってより難易度の低い投資を行なっている投資信託はこの費用が安いですが、これも運用パフォーマンスを下げる要因になり得ると考えてもいいかもしれません。

投資家として資産運用コストは意識したい

以上のように、資産運用コストの中には意識的に下げられるものもあればそうでない、そうすべきでないものもあり、迷う部分はあるかもしれません。

資産運用業界全体としては資産運用にかかるコストに低下圧力がかかっているので、放っておいても低下するかもしれませんが、同じ運用を他のプラットフォームで行えばもっと安くできるとしたらそれを選ぶべきです。

とはいえ、100円を削るためにプラットフォームを換えるのに1,000円のコストをかけてしまった、などといったこともあり得るので、できれば長期的に利用しやすいプラットフォームを選びたいものですね。