なぜ、海外で運用する必要があるのか？
近年は、海外の資産を購入する投資家が増えています。なぜでしょうか。一つは、国内の長引く低金利環境、そして低成長の経済状況を踏まえて、より高金利、高成長な経済の恩恵を受けることができるからです。アベノミクスによって演出された株高も今となってはさほど印象に残っていません。また、そのような環境下で、円安も同時に進めば、貨幣価値の下落により、海外旅行にすら行きづらくなってしまいます。
日本の経済は輸出入など、国外とも繋がっていることで、海外との格差に無縁でいることもできないのです。海外に資産を持つことで、上手くリスクを分散し、万が一に備えておくことができる、というわけです。
海外の資産を持つだけなら国内の金融機関でもできる
海外資産というと何を思い浮かべるでしょう。米ドル預金？アメリカの株式？ヨーロッパの債券？色々あると思いますが、外貨預金であれば銀行に、証券であれば証券会社に行けばある程度の選択肢は得られると思います。恐らく日本の証券会社経由でアメリカや中国の株式、ファンドを買ったり、外国債券を購入したりする人はいるでしょう。
実際、一昔前に比べれば、随分使い勝手が良くなりましたが、残念ながら、海外の資産に関しては無限の選択肢を与えられることはありません。国内の金融機関で買えるのは、その金融機関が国外の金融機関と連携をして、一部を提供しているに過ぎないからです。
どこまでいっても「その国の資産はその国に行って買いましょう」が基本なのです。
日本に居ながら海外の銀行口座を開設する
まずは「銀行口座はその国に居住する人を対象にしている」ことが多いことを覚えておきましょう。
この傾向は、マネーロンダリング対策などの規制が強化される流れの中で年々強くなっています。もちろん、海外銀行口座サポート業者のような人たちが現れてはまた消え、また現れては消え、という状態なので、希望を抱く瞬間もありそうですが、多くの場合は長くはもちません。
銀行口座開設には本人確認が必要であって、それは銀行窓口に実際に足を運ぶことによってチェックされているからです。なので書類だけ出して現地に行かずに銀行口座開設、というのはとても厳しいものです。
逆に言えば、勤め先の会社経由等で、しっかり身分が証明できる状態であれば、例えば海外赴任前に口座を準備する、といったこともできなくはありません。遠隔であってもオンラインや電話でのサービスが良いところもあります。
日本に居ながら海外の”運用”口座を開設する
海外での口座開設目的が「資産運用」なのであれば、実は銀行口座である必要は全くありません。投資信託にしても外国債券にしても、銀行口座を開設することなく投資をすることは可能です。
外国の証券会社であっても、オンラインで口座開設を行う方法を提供してくれたりしていますが、若干不安が残ります。できれば口座開設を代行、その後の口座管理サポートもしてくれる正規の業者を探すことが一番にはなってくるでしょう。口座開設サポート自体は色々な業者がいますが、正規というのは金融ライセンスを保有しているところ、という意味です。そうでないところの場合、外側からサポートはしてくれても、実際には立場上あなたがやるのと大して変わらないことがあります。
海外の運用口座開設にあたって注意したいこと
１ 口座凍結を防ぐ
口座凍結が起こる理由は凄くシンプルで、「長い間使っていない」「不自然な取引等が行われた」のどちらかです。そのため、使うかどうか分からない口座は開設しないこと、そして不自然な取引にならないようにすることが大事です。口座開設サポート業者では、PIN（暗証番号）の再設定などを手伝ってくれると書いてあることが多いですが、基本的には一利用者としてのノウハウの共有でしかなく、再設定をする権限があるわけではありませんし、万が一PIN（暗証番号）を教えてしまうようなことがあれば、そのまま詐欺に発展するという可能性もゼロではないのです。
２ 詐欺の可能性を排除する
そもそも住んでいない土地で口座を開設する場合、詐欺の可能性を排除することが一番難しいのですが、①口座を開く金融機関の概要、ライセンスを調べる、②口座開設を代行してくれる金融機関の概要、ライセンスを調べる、ことにより多くの場合は対処できます。逆にその情報が開示されないようであれば、そのルートで口座開設をすることは諦めた方が良さそうです。
３ ツアーに参加しない
海外口座を開設する場合、ツアーを組む業者がありますが、あなたが日本で銀行口座を開くときにツアーなど存在しないのと同じように、海外口座においてもツアーが必要な事例はありません。まして、口座を開く金融機関が主催していないこと場合、それがどんな意味を持つのかはよくよく考える必要があります。近年はオンラインでの口座開設に慣れている人が多くはなっていますが、口座を開設するからといって店舗に行ったり、あるいは本店を見ないと気が済まないという人がいることも事実です。もちろん、旅行のついでに、あるいは仲間と一緒に、というのは心理的な負担を軽くはしてくれるかもしれませんが、そんなことをしなくても海外口座は開くことができるでしょう。
４ 税金の問題はクリアにする
海外口座の場合、日本の税制に自動で対応してくれることはありません。ただし、日本居住者であれば、国内の口座と同様に各種税金の支払い（確定申告義務）が発生します。この煩雑さをもって税理士が止めに入ったりすることがありますが、実際は大した労力ではありません。ただ、ご自身で能動的に動く必要はあります。
海外銀行口座を閉鎖する前に
気楽に開設してしまった海外の銀行口座ですが、管理が面倒になって閉鎖するために渡航をする人が今度は出てきます。解約するときには持っている投資資産を全て売却することになります。少額であれば仕方ないですが、もし本格的な運用を行なっているのだとすれば、保有証券ごと海外他社の運用口座に移管することも選択肢になってくると思います。
いずれにしても海外口座は管理が重要になってきますね。