投資対象としての貴金属の比較(金、プラチナ、パラジウム)

投資対象としての貴金属

投資といえば株式や債券をイメージする人は多いと思いますが、それ以外の選択肢を持つことができれば投資家としての幅が広がります。

今回は「貴金属」を見てみますが、そもそも価値が変動しているということをあまり意識することがない人もいるのではないでしょうか。

しかし、貴金属にも需要と供給がありますから、価格も合わせて動いています。貴金属の場合、希少性がその価値とされており、供給側が限定的です。その割には社会の様々な場面で使われていることに気づくことができるでしょう。

貴金属といえば、金、プラチナ、パラジウム、等が挙げられますが、大きく分けて投資のパターンには2種類あります。

① 現物投資

貴金属は実物が存在しますし、天然ガスや原油のように劣化するものでもありません。金であればゴールドバー(延べ棒)の形で広く取引をされています。そのため、現物を保有することで投資をしていることになります。特殊な設備というほどでもありませんが、保管をする必要があるので、その量が多い場合は管理コストがかかります。

② 金融商品投資

貴金属はコモディティ(商品)の分類になり、同質のものが生産できるので、先物市場が存在します。現物を取り扱わずとも先物市場で取引をすれば、貴金属の需給見通しに合わせて上手く利益を獲得することもできます。

また、投資信託などの形態をとれば、投資家自身が貴金属を保有せずとも、貴金属の「価値」の部分だけを投資利益として取り込むこともできます。

「金」の投資資産としての特徴

2016〜2018年は1オンス=1,100〜1,300米ドルで推移し、2019年半ばから明確な上昇を始め、2020年には1オンス=1,700米ドルを突破しました。

金はその希少性ゆえに世界中で資産として認識され、貨幣の役割を果たした時期もあります。金は普遍的な価値を持つとされ、無価値になることが想定されていないのに加え、戦争や経済危機などの有事の際に買われる、いわゆる安全資産の代表例です。

史上最高値は2011年につけた1オンス=1,923米ドルですから、その意味ではまだ「余裕がある」という見方はできるかもしれません。

「プラチナ」の投資資産としての特徴

プラチナの史上最高値はリーマンショック後2008年の1トロイオンス=2,273米ドルです。

2015年以降は下落基調で、1トロイオンス=800〜1,000米ドル程度で推移しています。貴金属としてのプラチナは金よりも希少価値があると言われていますが、4割程度はディーゼル車の排ガス触媒に利用されていたこともあり、2015年のフォルクスワーゲンの排出ガス不正問題を受けて、下落トレンド入りしたことになります。また、南アフリカで大凡7割が生産されていますが、現地鉱山会社の電力不足やストライキなどもあり、必ずしも安定した供給が行われているわけではありません。

プラチナは貴金属でありながらハイリスクな性質を持っていることは覚えておきたいものです。

「パラジウム」の投資資産としての特徴

パラジウムは2016年頃から上昇基調入りし、2020年3月に史上最高値1トロイオンス=2,866米ドルをつけましたが、その後急落し、1,601米ドルまで下げました。以降は2,000米ドル近辺で推移しています。

そもそも、パラジウムを知らない人も多いと思いますが、銀白色の貴金属で、ガソリン車の触媒として主に利用されています。ロシアと南アフリカでおおよそ8割が生産されていますが、単独で生産されるものではなく、ニッケルやプラチナの副産物です。中国やインドにおけるガソリン車の需要拡大に対し、生産量が一定だったことから、価格上昇が続いていたのです。今後は電気自動車(EV)へのシフトが進むことも予想はされていますが、中国やインドの経済成長の中で、パラジウム需要は当面堅調であることが見込まれます。

貴金属投資をするなら

ここまで、金、プラチナ、パラジウムそれぞれの特徴について見てみましたが、上場投資信託(ETF)の登場により、一般投資家にとっても投資がしやすくなっています。

貴金属の中でも特徴が全く異なることをよく把握した上で投資活動に活かしたいものです。同じ貴金属であっても、全てが安全資産というわけではありませんし、コモディティの場合はより需給に影響を受けやすい側面があります。

金が高値圏へと推移する中、投資家は次なる資産の逃避先を求めてプラチナを保有し始めたという声もありますが、本来、投資家が貴金属に期待する、資産価値の保全という観点からすれば、恐らくこれまで通り金が最良の選択肢であり続けることでしょう。

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