プライベートバンクが提供する利回りはどれくらいか

お金が貯まったらプライベートバンクで運用したいと思う人や、プライベートバンクならではの高利回り商品といった触れ込みの宣伝はときどき見かけるが、果たしてその期待に答えるだけのサービスなのか、少し検証してみたいと思います。

顧客がプライベートバンクの口座移管を考えるとき

① 日本から香港へ

日本のプライベートバンクにおける提案は“金太郎飴”的だと揶揄されることもあるのですが、CoCo債や劣後債などの社債を勧めるか、あるいは社内で組成した仕組債を勧めるか、といった話になってくることが多いようです。もちろん債券であれば利回りや期間は固定され、安心感はあるものの、実際には仕組債のトリガーに抵触してその後は投資資金が当面返ってこない、といったことも起こり得ます。もちろん優秀なバンカーもいるのでそういった担当者に出会った場合は、そこで長い付き合いをし、逆にそうでないバンカーに出会った場合は、よりよりサービスを求めて彷徨うことになります。

② 香港からシンガポールへ

一度海外に出て行った、あるいは海外で稼いだ資金の場合、そもそも外貨ですし、海外のプライベートバンクに留めおく人が多いように見受けられます。とりわけ資金の置き場として、さりとて日本に近い香港かシンガポールを第一に考え、比較検討する人もいます。昨今の香港情勢を受けて、シンガポールの方が安全なのでは、と考える人もいるようです。

③ シンガポールから英国領マン島へ

海外オフショア地域の中でも、都市型オフショアなのか植民地型オフショアなのかは少し異なってきます。都市型オフショアの場合、大国経済がバックにつくという意味では強さがありますが、一方で金融産業だけではなくなり、人口もそれなりにいるので、“オフショア”という観点だけでシンプルに政策運営をすることはできません。全てをこそぎ落としてオフショアというメリットだけを享受するならば、植民地型オフショアの方がいいのかもしれません。

プライベートバンクが提供するのは節税による取り分増加か

そもそも、プライベートバンクの成長とオフショア法制は極めて密接な関係にあります。一つの見方として、同じ商品を展開したとしても、税金がかかるかかからないかでトータルでのリターンが変わってくることは想定できます。投資において税金対策は非常に重要なので、その点を重視してプライベートバンクの方が良い、ということはあり得ます。

ただし、プライベートバンクの雄たるUBSやクレディ・スイスなどでも、脱税ほう助が指摘されるなど、積極的な売り文句としての節税は後退傾向であり、またプライベートバンクという言葉がそのような負のイメージを連想することから、業界においてはウェルスマネジメントとして、包括的な富裕層サービスを提供する方向へ舵を切っています。

プライベートバンクへの過剰な期待

プライベートバンクの口座開設を一つのステータスのように感じる人はいるようです。JALやANAの上級会員やイベントでのVIP席のようなイメージです。実際、大物の口添え(紹介)がなければ特定の担当者に出会うための門を叩けない、という意味では合っていますが、こと運用に関しては本当にステータスが存在するのか、は分かりません。例えば、

  • プライベートバンク経由でしか投資できない年利20%のヘッジファンド、著名なマネージャーが運営する、限定出資者のみの年利15%のプライベートエクイティファンド
  • 他者に模倣されない節税スキームおよび資産保全
  • 年利10%以上は期待できないが、絶対に負けない運用手法

などがよく言われます。

これは正しくもあり、間違ってもいます。実際はプライベートバンクに口座を開設するだけでなく、資産として100億円を保有している必要があったり、あるいは想定利回りには現れない、潜在リスクが存在したりします。

プライベートバンクが提供する利回りはどれくらいか

過剰な期待を持たずに望んだとき、プライベートバンクでどのくらいの利回りが提供されるのか、をプライベートバンクの提供主体ごとに比較してみたいと思います。

証券会社・投資銀行系 10-15%

日本で言えば野村證券やゴールドマン・サックスなど、しばしばIPOの主幹事として登場するような会社です。彼らの場合、顧客の資産を増やす取引・商品を推奨することにモチベーションがあるため、積極的にリスクテイクをさせる傾向があり、利回り10-15%くらいを目標にしている人には合っているでしょう。顧客に合わせた商品組成も行なっているので、預かり資産は30-50億円くらいあることが望ましいです。

グローバル銀行系 5-10%

外資系銀行の中でも、リテールとプライベートバンク部門の両方が存在する銀行であり、HSBCやシティなどが該当します。UBSやクレディ・スイスなどのスイス系もグローバルな活動をしており、こちらに分類されます。あまり複雑な取引は好まないものの、融資が利用できることもあり、レバレッジを効かせる運用などに強みがあります。預かり資産は2億円程度からと比較的低く、また名前がよく知られているので、自分でプライベートバンクを探して口座開設する方はグローバル銀行系であることが多いでしょう。

老舗プライベートバンク系 3-5%

ロンバーオディエやジュリアスベア、ピクテなど、伝統的にプライベートバンク業務を行なってきた銀行です。融資などでリスクを取ることも少なく、銀行経営自体が保守的に行われているため、利回りは3-5%と低く、どちらかと言えば安心して資金を置いておきたいという人には向いています。預かり資産はやや高く5億円程度と考えておくとよいでしょう。

あなたがプライベートバンクに求めるもの

プライベートバンクと一口に言っても、利回り目的なのか資産保全目的なのかによって叩くべき銀行の門は違っていますし、銀行としての姿勢もさることながら、担当リレーションシップマネージャーの性格にも左右されますから、上記は一つの目安でしかありません。また、プライベートバンクはタダで利用できるわけでもありませんから、期待しているサービスをあなたが受けられるかどうかは十分に検討する必要があります。

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