自宅購入を不動産投資と考えるべきか

不動産は資産、でも自宅は資産なのか

不動産には価格があります。通常は建物価格+地価=不動産価格とイメージすると思いますが、価値のあるものは「資産」です。

一方で、資産にもインカムリターンを生むものと生まないものがあります。例えば、債券は利息がありますが、金地金はインカムリターンはありません。金地金の場合は価格が上昇する=キャピタルゲインでしか儲けることはできません。

さて、不動産投資の場合、賃貸に出せば定期収入がありますから、インカムリターンですが、自宅の場合はこれがありません。

さらには、固定資産税やらメンテナンスなどで常に何らかの費用がかかる状態、つまりリターンがマイナスになる運命にあります。不動産価格を占める、建物価格も、時間が経つにつれて減価償却により下がっていく運命にあります。

そもそも自宅購入の場合は、加えて住宅ローンを組む人が多いので、購入時点では完全に「所有物」とは言い切れない側面がありますしね。住宅ローンを支払い切れば資産だ、という言い方をする不動産業者もいますが、それは正しくもあり間違ってもいます。

自宅には資産価格があったとしてもリターンという形で家計を助けてくれはしないのです。

自分が住む家と他人が住む家は異なる

賃貸物件は他人の所有物であるのに対し、自宅物件は自らの所有物ですから、自分の好きなように改築をしたり、家具を配置したりします。もちろんそれは自宅ならではのメリットではあるのですが、その家に他人が住みたいとなるかは分かりません。

友人宅にいって、「オシャレなお家」と褒めることはあっても、実際住みたいですか、と聞かれて「はい」となるケースは稀です。デザイン性のある自宅の場合、同じ感性を持つ人を探す人は可能かもしれませんが、逆に自らの感性に合う唯一無二の物件を探す人はあまりいません。

なぜなら、購入してから自分好みにすれば良いだけだからです。買う人からすれば「自分色に染めやすい物件」の方が良いので、やはり個性が強すぎてもダメなのです。例えばデザイナーズのワンルームマンションであっても奇抜なものは多くはなく、”没個性”であることが万人ウケするポイントになっています。

自宅を内見せずに購入する人はいないが、不動産投資では内見する必要はない

不動産投資の場合、大事なのは利回りの確実性ですから、賃貸のついていない物件よりはついている物件の方が好まれる傾向があります。

日本の場合、貸借人がオーナーと直接会ったことのあるケースは相対的に少ないですから、オーナーチェンジをするときも内見のため賃借人に部屋を見せてもらうということはあまりしません。また、利回りさえ稼げるのであれば、一定のクオリティの物件であることさえ分かれば、細かな物件の良し悪しはあまり問題にならないケースもあります。

投資家として内見する人の場合は、駅近やオートロックなど「賃貸がつきそうな条件」を満たしているかの方が大事なので、部屋そのものに対するこだわりはさほど強くはありません。一方、自宅の場合は、購入後は自分の生活空間になるわけですから、防音が気になったり、キッチンの広さが気になったりするので、内見を省く人はほとんどいません。

自宅にも不動産投資の視点は必要

ここまで見てくると、自宅購入と不動産投資は異なる部分は多かったことに気づいたと思いますが、それでも不動産投資の視点は必要になってきますので、いくつかの点を見てみましょう。

他人が住んでも良いと思う家に保つことは必ずプラスになる

多くの人は、自宅購入は一生に一度と考えていますが、実際にはそうならないことを意識して購入することが重要です。例えば、ワンルームマンションには年を取って家族が増えれば住むことはないでしょうし、転勤などのため同じ場所に住み続けることも想定しづらいときもあります。

将来が不確定な場合、あるいはいつか出て行く物件であることが決まっている場合、不動産購入というよりは賃貸を選好する人が多いです。それは一つの正しい選択ではありますが、一方でなぜ自宅購入を排除するかというと、買った物件を売ることを想定していない人が多いからです。

でも、現実には物件は売れます。一方で、売れる物件を選ぶこと、売れる物件のまま保つこともまた重要です。したがって、リノベをするなら、自分以外の人にとっても気に入ってもらえるデザインにするという視点です。

物件のメンテナンスを自宅だからといって省いていいわけではない

通常、賃貸の場合は定期的に借家人が代わりクリーニングが入ったり、マンションであれば大規模修繕を行ったりします。

しかし、一戸建ての自宅を購入する人に多い発想ですが、物件のメンテナンスを怠る人がいます。建物にも一代以上もつことを期待していないからですね。もちろん何もしなくても十分な期間、建物は維持されますが、建物だって劣化します。耐震基準なども変更になりますから、建物自体が危険な状態にないかなど、点検することも必要になってきます。マンションならこのことを他のオーナーが提起してくれますが、自宅の場合は自分で考えてあげる必要があります。

最後に、自宅購入は不動産投資の要素は小さいが、その視点を持つことは重要

以上により、自宅を価値のある状態に保つことが重要だということは気づいていただけたのではないでしょうか。自分の目線と他人の目線は常に違います。

他人から見た「価値がある状態」を見定めるのは間違いなく投資家の視点ですから、賃貸でいいやと諦めるのではなく、しっかりとマネジメントすれば、生活スタイルや年齢の変化に合わせて、自宅を買い替えることもまた素晴らしい選択になり得ます。

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