不動産投資は実物投資である
不動産投資といえば、実物投資の代表格ですね。実物投資というのは現物投資とも言われ、形のある資産に投資をするものです。他には金地金やワインなども実物投資の対象です。実物投資の最も大きな特徴は、所有する資産自体があなたのものになっている点、つまり直接投資であるということ、そしてそれが目に見える資産であるということです。
ただし、最近は不動産REITやクラウドファンディングなども一般的になってきており、これらはより金融商品の性質を強くしていますから、金融商品との境界は曖昧になりつつあります。
金融商品は実物投資ではない
金融商品とは、株式や債券、投資信託等のことですが、いずれもカタチがありません。つまり、その存在を目視で確認することはできず、契約上の権利を主張しているにすぎないのです。その意味で、その場に”ある”ことによって価値の保証ができる実物投資を大きく性質が異なります。ただし、この”契約上の”権利というのは、先進国においては極めて法的に強力であるため、多くの人が利用しています。
金融商品のその先にはさらに金融派生商品(デリバティブ)というのがありますが、実物から遠ざかるほど法律面で守られるかどうかが大事になるとは言えるでしょう。
不動産投資と金融商品の相性が悪いとき
不動産投資と金融商品の相性が悪いときはどんなときでしょうか。
不動産投資も金融商品も投資商品である以上、現金を必要とします。その意味ではどちらかにしか投資ができない瞬間はあるので、競合する存在と言えるでしょう。
よく比較されるのは、不動産オーナーになることと、社債の保有者になることの比較です。不動産オーナーになれば、保有不動産を賃貸に出して定期的な賃料を得ることができます。このとき、物件の魅力を高めることで賃料を高くする可能性がある点で現物投資の魅力があります。一方で、社債の場合、債権者となった時点で良くも悪くもそれ以上の努力は必要ありません。淡々と決められた金利払いがあるだけです。
もし保有不動産利回りと社債の利回りが同じだったとしましょう。単純に比較するならばすぐに売却できる可能性があり、そして管理コストを一切かけなくて良い社債の方が魅力的ではあると言えるかもしれません。あるいはより魅力的な不動産にすることができるという点で利回りを高くする可能性のある不動産の方が魅力的であるかもしれません。
投資商品としては何よりも実質利回りが重要なのであり、その意味で不動産投資と金融商品は比較して考えるのが良いのでしょう。
不動産投資と金融商品の相性がいいとき
逆に不動産投資と金融商品の相性がいいときはどのようなときでしょうか。
最も大きいのは実物不動産の場合、抵当に入れることができ、レバレッジをかけられることです。
フルレバレッジは推奨されませんが、銀行からの借入を行うことでより多くの不動産投資をできるという魅力があります。一般には、金融商品は銀行からの借入は行えませんから、基本的には全額キャッシュで購入することになります。その点で、不動産投資と金融商品は異なっており、不動産投資でレバレッジを効かせることで、利用しなかったキャッシュを社債などに回すことで例えば2倍のリターンを目指すこともできます。
一方で、富裕層の場合は金融商品にもレバレッジをかけることがあります。例えば、株価が安定的な大型株式を購入し、それを株式担保としてプライベートバンクから借入を行い、社債を購入する、といったことができます。あるいは株式担保に入れることで貸株金利を得る方法もあるでしょう
もちろん、レバレッジをかけるという行為は、逆風が起こればその分ダメージが大きいわけですから、不動産であれば不動産の投げ売りに、債券であれば債券の投げ売りに繋がることは理解しておくべきです。上手くいけばより良いリターンを得ることができ、そして悪くなれば巨大な損失に繋がる可能性もあるのです。
不動産投資と金融商品は両立した方がいいのか
不動産投資を金融商品を上手く比較していることのできる人は実際は少ないように感じます。それは先に述べた、現物か現物でないかという視点を含んでいるからです。投資家の個性としてこの観点を重要に思う人は多いです。仮に同等の利回りを提供できたとしても、手間のかからない金融商品より不動産投資を選ぶ人は一定数いるということです。
ただ、現実には不動産投資と金融商品は両立できる方が良いだろうとは言えます。なぜなら、現物か現物でないかによって税制上の扱いは異なりますし、また流動性の観点からしても違います。
大事なのは、どちらかに偏らなければならない、という感覚はできるだけ排除し、メリット・デメリットを客観的に比較できることのように思います。投資ポートフォリオが不動産投資に寄っている人は金融商品を、そして金融商品に寄っている人は不動産投資を、随時検討対象に入れることでより良い投資を検討できることは常にいいことのように思います。