日本でも注目され始めたプライベートバンカーという仕事
この記事を読んでいる人の中にはプライベートバンカーという言葉に馴染みのない人もいるかもしれません。
「プライベートバンカー」とは、富裕層のために、金融資産の管理・運用を行うとともに、事業再構築・事業承継を含め、クライアントの生涯あるいは複数世代に渡って支援する専門家のことです。
プライベートバンクはもともとはスイスを中心に発達した金融サービスの形態であり、本来は名前のとおり”銀行員”ですが、一般にイメージするような銀行窓口のようなものがあるわけではありません。また、今日的な用語の使われ方としては、銀行の人間だけを指すわけでもありません。
日本にもHSBCやCitiといった外資系金融機関が参入したことで広まり始め、今では大手金融機関には大口の顧客のみを相手にする営業部隊があり、彼らをプライベートバンカーと呼ぶことがあります。また、日本の場合は、相続や税制対応が資産保全のために欠かせないため、弁護士や税理士がプライベートバンカーのような役割を演じていることがあるようです。金融サービスのみならず、富裕層独特のニーズに対応できるよう、知識と経験を蓄積した専門家こそがプライベートバンカーなのです。
プライベートバンカーになるための素質
ではどんな人がプライベートバンカーとして働いているのでしょうか。先に述べたとおり、プライベートバンカーには知識と経験が必要です。そのため、証券会社などで営業実績を積んだ人間が、出世してプライベートバンカーのポジションにつくというケースが多いようです。ただし、「金融商品を販売することに長けた」だけの人間はプライベートバンカーになったときに苦労します。
なぜかというと、クライアント自身が実業家としても投資家としても非常に”目の肥えた”存在であるからです。クライアントの高い要求水準に応えなければなりませんし、不誠実な姿勢はすぐに見抜かれてしまいます。
人には個性がありますから、どんな人物がプライベートバンカーに向いているか、ということを決めることは難しいですし、それを定めてしまうことは《プライベート見聞録》の趣旨に反しているような気がします。ただ、「プライベートバンクというサービスを通じてクライアントが高い満足を得るため」ということに絞るならば、例えば以下のような素質が必要な気がします。
・「顧客に親身に寄り添う姿勢」
・「プロフェッショナルであり続ける向上心」
・「高いコンプライアンス意識」
富裕層の方々は趣味に仕事にと比較的多忙な方が多いので、スムーズにコミュニケーションが取れること、あるいはあらゆる悩みについてまず初めに相談されるような信頼を勝ち得ることがとても重要であり、そのためには顧客の身の上のことまで親身になって聞くことが求められます。また、寄り添うだけではプライベートバンカーではないので、プロとしてのソリューションを提供できることが不可欠です。ヒントは顧客との会話の中にあるかもしれませんが、顧客自身がニーズとして必ずしも依頼してくるわけではありません。一様でないニーズを拾い上げるためにはプライベートバンカー自身に向上心がなければなりません。顧客層から考えると、下手をすれば「魔が差す」といったことも起きやすいですし、仲良くなったとしても「適切に付き合う」ということが必要になります。顧客はプライベートバンカーの個性そのものを気に入ってくれることもありますから、そんな中でも自らを律し、また他の顧客とも平等に接することも重要になってきます。
プライベートバンカーに期待してはいけないこと
いわば「何でも屋」として非常に優秀そうなプライベートバンカーですが、そのイメージから過度な期待感を抱いてはいけません。どこの世界もそうですが、イメージが先行しては必ず眼鏡が曇ってしまいます。プライベートバンカーに期待してはいけないことの例は以下です。
・その人と信頼できることと、資金を増やすスキルが並存しているとは限らない。
・全てのプライベートバンカーが優秀なわけではないし、あなたのことを親身に考えてくれるわけではない。
・費用に見合うだけのサービスを常に提供してくれるとは限らない。
プライベートバンクはあくまでもサービスですから、あくまで利用者としてそのサービスが適正かどうかの判断基準を持っておかなければなりません。プライベートバンクと銘打っているからといって、最上級のサービスが約束されているわけではないのです。
プライベートバンカーと出会うには
さて、街中を歩いていても富裕層(と分かる人)に会うことがないのと同じように、プライベートバンカーに街中で会うこともないでしょう。ではどのようにしてプライベートバンカーと会えば良いのでしょうか。
・家族の面倒を見る人物が既にいる
・仕事仲間から紹介される
・ふとしたタイミングで知り合う
・各金融機関に問い合わせる
などが一般的かもしれません。 株式や不動産を持っていれば、何らかの方法で営業をかけるケースもあるようですが、プライベートバンカーとの出会いは「たまたま」か「あなた自身が望んで」しかありません。場合によっては、プライベートバンカーを紹介するブローカーのような存在に出会うことがあるかもしれませんが、そのブローカー自身がプライベートバンカーでないことをしっかり理解しておくことも重要です。
プライベートバンカーの預かり資産は一般にはUSD1mln(1億円)以上ですから、決して少ない金額ではありません。警戒しすぎは関係構築に難がありますが、適度な距離感でそのプライベートバンカーの「実力」を測ってみてください。良いプライベートバンカーに出会うことができればあなたの人生をしっかりと支えてくれるでしょう。