富裕層の医療ツーリズムを支える保険とは

訪日観光客増と医療ツーリズム

日本を訪れる外国人、訪日観光客は年々増加しています。それに呼応する形で伸びているのが、日本の高度な医療サービスを受ける目的で訪れる外国人です。

医療を目的とする渡航は「医療観光」「医療ツーリズム」「メディカルツーリズム」と呼ばれています。

医療ツーリズムの目的は、最先端の医療技術であることもあれば、あるいは自国の医療での待機時間の解消、受けられない医療を受けるためでもあります。

日本の場合、国策として経済産業省を中心に医療ツーリズムを推進する一方、社会保障としての側面を重視する厚生労働省はやや消極的な面はあると言いますが、それでも医療ツーリズムは拡大基調にあります。

進む医療の国際化 〜医療ツーリズムの動向〜 – DBJ

タイやシンガポール、韓国等では、医療ツーリズムは国家戦略の一つと位置付けられています。

シンガポールの医療ツーリズム

シンガポールの場合、2003年に急成長する中国やインド、中東などからメディカル・ツーリストを呼び込もうと”Singapore Medicine”というキャンペーン計画を打ち出しました。

実際、隣国のマレーシアやインドネシアからは先進医療を求めて富裕層が治療目的でシンガポールを訪問しています。シンガポールの場合、英語が広く通じること、インフラが整っていること、国が動きいち早く医療技術の高度化に向けて人材育成支援を行ったことなどが奏功しました。JCI認定を取得している病院数がアジア第一位であることもからもそれがうかがえます。

シンガポールの場合、社会的弱者のためのセーフティネットとのしての医療よりも、相応の資金を用意してより良い医療を受けること、が国として示した医療の形だったこともあり、医療ツーリズムとも相性が良かったと言えるでしょう。

日本への富裕層の医療ツーリズムの実態

日本の医療ツーリズムに対する期待はより高品質な医療を求める新興国富裕層と、より低いコストでの医療を求める先進国富裕層に大別されるでしょう。一定の経済力があれば、医療滞在ビザによって1年までの滞在が認められます。

日本においては、ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)が渡航受診者の受入実績のある病院を紹介しています。

富裕層の医療ツーリズムの特徴は、緊急性のある医療とは限らず、人間ドックや美容整形の場合もあります。がんなどの長期治療が必要になるものも多いですね。観光の中には温泉療養などのヘルスケアも含まれることがあります。

医療ツーリズムに向いている保険

もともと医療ツーリズムを行うのは、資産を持つ富裕層であるケースが多いですが、その場合も事前に医療ツーリズムに適した医療保険に加入することはメリットになり得ます。

その場合のポイントになってくるのは例えば以下です。

  • キャッシュレス
  • 完全個室対応
  • 言語対応
  • 提携病院
  • 高額医療費対応

必要となる医療によっては、日本以外の国を選ぶ必要もあるので、グローバルに様々な病院と提携している保険会社が良いでしょう。

保険制度の悪用や医療費未払い問題の解消

医療ツーリズム前に保険に加入することのメリットは本人にとってのメリットであるばかりでなく、病院側や受入側の国にもメリットがあります。

日本の場合、国民皆保険制度があるために、経営者ビザや扶養制度を利用して安く治療を受けることを目的にするケースや、善意で患者の受入をした結果、医療費未払いのまま出国してしまったという例が起きています。未払い履歴があるひとは再入国を拒否される、といった対応もなされていますが、そもそも未払いが起きないことの方が大事です。

医療コーディネーターの存在が重要

日本へやってくる医療ツーリズムの多くは中国人であることがよく知られています。患者は基本的に日本語を話すことができないので健康診断や治療の予約にすら難があるため、患者側と病院側の間をとりもつ、医療コーディネーターが優れた人物である必要があります。

医療コーディネーターは日本人というよりは患者側の国の人物であることがより重要であると考えられています。なぜなら、よりきめ細かなヒアリングをし、帰国後のアフターケアまで担当する必要があるからです。

ただし、医療に関する内容が含まれるので、単なるツアーガイドでは務まらないことから、良質な医療コーディネーターに出会うことが医療ツーリズム成功のカギとなります。

医療ツーリズムの今後の展開

新型コロナウィルス流行を受けて、医療の逼迫、海外渡航の制限など、医療ツーリズムにも逆風が吹き荒れています。

ただし、日本の医療対応が世界から注目される一つの機会になったこともあり、コロナ収束後の一つのトレンドになっていく可能性は十分あるでしょう。再び五輪に向けて日本経済を復活させる柱になり、かつ五輪をきっかけにより拡大していく余地のある分野ですから、国を挙げて盛り上げたいものです。