資産10億円で行う資産運用とは

資産が10億円ある人の属性は

まずもって資産10億円が空から降ってくることはないので、資産を築くことが必要なのですが、ここで指す資産10億円とは金融資産10億円のことである、としましょう。同じ資産であっても不動産の場合、借入も同時に数億円起こしていることがあるからです。この場合、純資産は数億円に縮小してしまいますし、負債がある分、投資に回せる金額を少なく見積もる方がよいからです。

改めて、資産が10億円ある人というのはどういった属性の人なのでしょうか。

1 宝くじが当たった人

いきなり拍子抜けかもしれませんが、これが決して少なくありません。特に、ある日突然億万長者になった場合、資産家としてのスキルが追いついていないので、すぐに使う人よりは取っておく人の方が多い気がします。

2 カジノで大勝ちした人

この場合は運の要素は強いとはいえ、戦略的に資産を築いた人であることは間違いありません。使うときは使ってしまう性格の人が多いかもしれませんが、それでも日常生活で使い切れる規模の資産ではありません。

3 事業で成功した人

最も多いパターンではないかと思いますが、事業利益として蓄積したケースです。上場を目指すベンチャー系というよりは、手堅い商売で地道に資産を築いた経営者の方が、自由度の高い資産を保有している傾向があります。

4 相続を受けた人

日本の場合、相続税がそれなりにかかるので、キャッシュで受け取るという人は多くありません。何らかの事業承継や相続対策を受けた結果、資産を手にすることになるでしょう。

資産が10億円あれば大体どこのプライベートバンクも利用できる

別稿で金融資産が1億円あれば、どこかのプライベートバンクが利用できる、と書きましたが、近年はプライベートバンクの最低預入額は上昇傾向にあって、5億円以上、10億円以上というところは少なくありません。

ただ、10億円以上あれば概ねのプライベートバンクの門戸は開かれていると言ってよいのではないかと思います。もちろん、プライベートバンク口座を開いたからといって何か特別な資産運用ができるとは限らない、という点は注意が必要です。

資産10億円でも大して運用手法は変わらないときはある

敷居の高いプライベートバンクでも、実は資産運用の提案内容(ピッチ)に大きな違いはない、という現象は往々にして観測されることが分かっています。なぜなのでしょうか。

一つにはプライベートバンカーの質の部分です。

もちろん、優秀なバンカーが担当につくことは事実なのでしょうが、優秀であるからといって、未来の見えない資産運用の未来が見えるわけではありません。それに、プライベートバンカーは金融のプロであっても、運用のプロではない、という点も影響していると思います。プライベートバンカーの優秀さは、資産運用以外の事業支援やタックスプランニングなど、幅広い知見でもって現れてくるものだと考えた方がいいでしょう。

もう一つは顧客側の事情です。

優秀なプライベートバンカーほど、顧客に寄り添った提案を行います。そのため、顧客が保守的であれば、保守的な提案になります。日本人顧客の場合、主たる資産でリスクを大きくとりたがる人は多くないですし、中身の見えない投資ファンドはほどほどにしか考えません。

結果的に、プライベートバンクを利用したにも関わらず、資産運用は現物社債だけといったような、金太郎飴的な姿になっていくことになり得ます。

10億円を放ったらかしにしておく手はない

逆に、資産が10億円あっても一切資産運用に回していない、というケースは少なくありません。その場合の資産の多くはオーナー会社に事業利益として蓄積されており、それ自体が事業成功の象徴と化しているからです。

ただ、資産10億円もあれば年率5%で運用できるだけで、5千万円ほどの運用益になりますから、大きなリスクをとることなく、事業利益以外の収益源として機能することはあり得ます。また、事業承継なども意識しながら資産運用プランを組むのが重要です。

資産が多いほど、資産運用の選択肢は多い

一般に、資産運用にはスケールメリットがあります。それに加えて、資産が多いほど、資産運用の選択肢が増えることはあっても減ることはありません。

特に資産10億円ほどある状態であれば、恐らく資産の大半は余剰資産と見做すことができ、即時換金性がないためにリターンの大きいプライベートエクイティなどへの投資チャンスも生まれてきます。

資産が10億円あるからこそできる投資とは

近年は資産が多いからといって特別な運用方法により超過リターンが見込める、という発想は衰退傾向にあります。ただし、投資家の募集範囲を限定したファンドレイジング(資金調達)は依然として残っており、ファンドへのアクセスが得られた時点でリターンが確約されたようなものもあります。例えばヘッジファンドですね。

不動産も10億円くらいあれば選択肢が増えますが、ここで重要なのは金融資産として維持し続けることです。リターンだけでいえば社債などで安定したリターンをあげることはできるのでわざわざ流動性の低い(売買に時間のかかる)不動産よりも、いつでも売買ができる有価証券の方を好むべき理由もあります。

一方、資産額が多くなれば、貨幣価値の下落に繋がる、インフレへの対策の重要性も増しますので、不動産だけでなく、金や物価連動国債などを一定割合保有することが望ましいとは言えるでしょうか。

結論からすると、資産10億円に対しては資金規模を無視しても資産運用はできますが、可能であれば資産規模に合わせた資産運用をすることが望ましいし、そのチャンスがある、と考えるべきでしょう。もちろん資産10億円は一財としては多いですが、金融市場の取引額としてはさほど大きくないので、気負うことなく、様々な情報収集をしておきたいものです。

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