個人投資家へのプライベート・エクイティ投資の門戸

プライベート・エクイティ・ファンドの概要

プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)とは、複数の機関投資家などから取り付けた出資を元手に、事業会社の未公開株などの資産を取得し、会社経営への関与を通じて企業価値を高め、

売却することで高い利益を上げるとともに、投資家にリターンの還元を行っています。

PEファンドといっても投資手法は様々であり、在籍するマネージャーの経験を見れば概ね特色が分かります。カテゴリーとしてはベンチャーキャピタルも中に入りますが、バイアウトファンド、企業再生ファンド、ディストレストファンドなどが典型的なPEファンドとして扱われます。

各企業への投資期間は5年から10年くらいが目安であり、したがって、ファンドの存続期間も同様に10年くらいと考えられます。上場株式と違って出口戦略がIPOや他のファンドへの売却になるので、個々の投資家がファンドの存続期間中にその出資を引き揚げることはほとんどできません。投資ホライズンの短い投資家にはまず向いていません。

個人投資家へもPE投資の門戸は開かれつつある

従来はPE投資は機関投資家と、特定の個人投資家(富裕層)にのみ提供されており、一般投資家が参加できない市場でした。

ただ、徐々に一般の個人投資家が出資できる仕組みが確立しつつあります。

例えば米証券取引委員会(SEC)では、個人投資家向けのプライベートエクイティ投資へのアクセスを含め、非上場企業の資本調達環境に関する幅広い意見を求める意向が示されており、大手ファンドグループも前向きに取り組む姿勢を見せています。また、シンガポール金融管理庁(MAS)は2019年10月15日、CapBridgeによる個人投資家への投資プラットフォームの提供の認可を出しました。

PE投資のためのチケットは限られる

楽観視できないのは、PE投資機会自体が決して潤沢なわけではないので、門戸が開かれたからといって投資がいつでも誰でもできる状態になることはないだろうという点です。また、ファンドレイズのタイミングに合わなければ投資に参加することもできません。

そもそもPE投資というのは、限られた優良な投資機会を厳選して取り込むことによって高い利益を上げているわけで、その規模が大きくなるにつれて利益率は下がることも起こり得ます。

また、会社経営へ関与できる優れたマネージャーという人材面においても豊富というわけにはいきません。

PE投資は高いリターンが得られるという過信で参入した場合、個人投資家にとって良い結果がもたらされるかどうか分からないのです。

ただし、投資のための限定チケットが手に入る機会に恵まれたのだとすれば、十分検討するに値するものにはなってくるでしょう。

PEファンドの具体例

PEファンドのアジア地域での代表例といえばコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR) Asiaです。このファンドでは第2号ファンドで60億米ドル、第3号ファンドで93億米ドルの資金調達を行なっており、アジア地域での投資を行う最大のプライベート・エクイティ・ファンドです。主たる投資家は公的年金、企業年金、政府系ファンド、保険会社、財団、ファミリーオフィス、そして富裕層の個人投資家です。直近では、アジア向けバイアウトファンドで、125億米ドルの調達を目指し、2020年6月末までの第1ラウンドで8割にあたる100億米ドルの調達が完了しています。長期で優良な実績を持つファンドは、新型コロナによる混乱にも追い風を受けて、活発な投資活動を行なっています。

アジアにおけるKKR – 公式ウェブサイト

PE投資の規模

調達額の例から見ても一人ひとりの投資家の出資額が多いことは想像できますが、概ね機関投資家であれば100百万米ドル、大きければ500百万米ドルくらいでしょうか。

個人の投資家であれば10百万米ドル(約10億円)程度が目安だろうと思います。ただ、個人投資家への門戸が開かれる中で、百万米ドル(約1億円)あるいはそれ以下でもチャンスは広がってくる可能性はありますから、今後の動向には注目したいものです。

例えば、個人投資家への投資プラットフォームでは、Moonfareが有名ですが、最低投資額€100,000(約1,000万円強)からスタートすることもできるようです。

Moonfare – 公式ウェブサイト

PE投資への近道

もしPE投資に興味を持つ人がいたとしても、待っているだけでは投資のチケットは恐らく回ってきません。なぜなら、投資のチケットを欲しがる投資家は山のようにいて、そしてより金額も大きい投資家が交渉力を持つ世界だからです。

また、資金調達の開始がメディアで取り上げられることは多くないので、出資チャンスがあることすら気づかないこともあります。大切なことはアンテナを張り続け、出資のチャンスに近い人物と繋がっておくことです。

この点だけをとってみれば、コンサートやグランプリなどでVIP席を用意してもらう方法とさして違いはありません。何事も人脈とアンテナが大事です。

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