コロナショックでの社債投資の機会を探る

さて、今回はコロナショックで訪れた社債への投資機会を振り返るとともに、今後の動きについてまとめてみたいと思います。

新型コロナウィルスを一因とする経済ショックとして、今年に入って株価の急落や、急激な円高からの急激な円安が印象に残った人は多いかもしれませんし、実際、株価がV字回復をするための”底”は一体いつだと思うかという質問は数多くいただきましたが、こういった大きな市場の変化は様々な金融市場に波及効果がありますので、改めてご自身にとってベストな投資エリアについて再考することは大事だと思います。

今回は、株価下落の裏側で起きた、一般には安全資産と言われる資産の動きについてまとめてみたいと思います。

一時は債券価格も暴落へ

2020年3月に株式市場が急落したことは記憶に残っている人が多いと思いますが、実はその裏側で債券価格も急落をしていました。

いわゆる、安全資産と言われる債券に対して、なぜ「売り」が殺到したのか、というと、一番は「現金第一、Cash is King」という動きが起こったことが挙げられます。当時はとにかく少しでもリスクのある資産は敬遠され、現金化の一途を辿りました。

また、株式の投資割合が急激に下がると、そのバランスをとって債券の投資割合を下げる必要が出てきたり、あるいは株式における損失補填をするために債券の利益確定をしなければならない、といった動きにも繋がることがあります。

投資適格級を中心に動揺は収まる

債券の中では最も安全な債券は国債だとされていますが、社債の中にもリスクが高いもの、リスクが低いものがあります。

一般には、信用力が高い=発行体のデフォルトリスクが低い債券を“投資適格級”に分類します。信用力が高い、というのをより具体的に言うと、外部格付け機関(S&PやMoody’sなど)が行う格付けにおいて、BBB(トリプルB)以上を取得しているものになります。

もちろん、AAA(トリプルA)からC(シングルC)まではだんだんとリスクが高くなるという格付けの仕方ですが、BBB(トリプルB)とBB(ダブルB)の間には大きな壁があると言われ、BB(ダブルB)以下の“投機的格付け”のものは区別されるので、投資家の多くは、その名のとおり、“投資適格かどうか”を意識して投資をしています。

本来、投資適格であればデフォルトはほぼないと考えられているので、値動きは小さいはずなのですが、今回のコロナショックではその領域にも一抹の不安がよぎりました。もともと、社債の取引量はそこまで多くない、というのも災いしたかもしれません。

その後、米連邦準備銀行(FRB)にせよ、欧州中央銀行(ECB)にせよ、社債の購入を積極的に行うことを発表したことにより、壊滅的な事態は免れ、全般的には落ち着きがみられています。一時は、社債市場が干上がり、企業の財務担当者の顔が真っ青になったと聞きますが、その後は社債発行も活発になり、難局を乗り切った企業も多いことでしょう。

落ち着いたならハイイールド債への投資はアリか

金利がさらに低くなったことで、利回りを追求する投資家が取れるリスクは信用リスクになってきます。

投資適格級の社債では十分な利回りが確保できないので、いわゆるハイイールド債に投資をする投資家も増えてきているように思います。ハイイールド(高利回り)というと聞こえはいいですが、要するに投資適格ではなく、投機的とされる債券です。

いや、それでも債券は債券だから安全資産だよね、という声もときどき聞きますが、そういう方は慎重になる方がよいでしょう。債券なので平時は安定しているように見えますが、企業に投資をしていることに変わりはありませんから、経済危機になれば投げ売りが始まり、あるいは企業のデフォルトという結果に陥ります。

もともとハイイールド債の場合、一定の確率でデフォルトが起こるとされているので、外部格付けに頼りすぎず、ご自身の投資する企業の業績動向を注視する必要があります。“ババを引かないスキル”が求められていると言えるでしょう。

安全資産の中にもわずかなリスクは内在する

投資の世界において、最も投資家がリスク回避的になる場合、「Cash is King(現金は王様)」という言葉が聞こえてきます。

簡便な理解としては、株式=高リスク資産、債券=低リスク資産ですが、ここで気をつけたいのは債券はあくまで“低”リスク資産である、ということであって、“無”リスク資産とは誰も言っていません。実際、債券が無リスク資産でないことを、今回のコロナショックで実感した人も多いのではないでしょうか。

AAA(トリプルA)の債券は安全か

外部格付けによる最も高い格付けであるAAA(トリプルA)を獲得すれば安全か、という点でいうと、これは相対論としてはそうだ、ということになります。逆に、国債だから安全だというのは違っています。

アメリカのように格付けの高い国債もあれば、日本の国債でも最上級の格付けではないわけで、ハイパーインフレやデフォルトを繰り返している国だってあります。

一方、安全だからといって、社債においてトリプルAの格付けを持つ債券に投資をする個人投資家というのはほとんどいないでしょう。なぜなら利回りが非常に低く、投資リターンが上がらないからです。

他方、機関投資家の中にはトリプルAの格付けが付与された債券を買い占めるところもあり、社債ではありませんが例えばCLO(ローン担保証券)などの証券化商品が代表的です。ただ、社債のトリプルAと証券化商品のトリプルAを全く同じリスクと認識するのは行き過ぎた議論のようにも思います。

地方自治体債券はどうか

国債に準ずるとされる、地方自治体債はほぼほぼデフォルトがないと言われていますが、それゆえに国債にヒゲが生えたくらいの利回りしかありません。

通常は国債と遜色ないものとして取引ができますが、今回のコロナショックにおいて最も財政的に逼迫したのは地方自治体であり、それゆえに地方自治体債の価格も下落に向かいました。

アメリカの場合は、FRBが社債同様に買い入れ方針を示したので、その後は落ち着きましたが、財政状態が改善するわけでもなく、場合によってはデフォルトということもあり得ない話ではないです。

今後、社債投資の機会はあるか

今年上手く安値で社債を買うことができた人はきちんと事前の準備ができていた人ではないかと思います。一方で、ニュースを追いかけると「米ドルの金利が下がった」ことも認識されているので、社債投資の機会は薄れたと諦めた人もいるかもしれません。

確かに、ベースとなる金利が下がったことは債券価格を押し上げることにはなっていますが、

社債利回り=リスクフリー債券利回り(国債利回り)+ 信用スプレッド

ですから、個別の社債を見てみれば、信用スプレッドが拡大していて、投資機会があるとみなせるものもあるかもしれません。

もちろん、信用スプレッドとは破産リスクに対する対価ですから、投資する企業の業績が急速に悪化していないか、悪化しているとしてそれは破産に陥る程度のものか、を判断して投資をすることになります。コロナショック後の社債投資はより慎重に行いたいものです。

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