新型コロナウィルスのパンデミックにおいて、景気の先行きが見通しづらい中でも、しっかり収益を上げることが見込まれている、テック系企業の大型株に資金が大量に流入しています。テックバブルと明確に呼ばれる日も近いのではと思うので、今回現れたバブルの芽について取り上げてみたいと思います。
注目を集めるテック系企業
かつてアメリカでは1990年代前期から2000年代初期にかけて、ドットコムバブル(インターネットバブル)というITバブルがあり、多くのITベンチャーが設立されました。このときも米連邦準備銀行(FRB)の低金利政策が後押しとなりましたが、その後利上げに転じたこと、そして2001年9月11日の同時多発テロ事件を経て、バブル崩壊となりました。
今回、ドットコムバブル当時と大きく様相が異なるのは、テック系企業の中でも、大型株に人気が集中している点です。具体的には、
- Amazon
- Apple
- Microsoft
といった、従来からGAFAと呼ばれていた巨大企業を中心に構成されていますが、
- Tesla
なども同じような動きをしています。
また、フィンテック企業も同様に注目を集めてきましたが、大型テックの勢いの影に隠れている印象はありますね。例えば欧州であればRevolutやMonzoなどです。直近はワイヤーカードの破綻が話題になりましたが、これもまた大きな波に飲み込まれてかき消されたように思います。
テックでありテックでない
テック株といえば、“熱狂的なブーム”をイメージするかもしれませんが、今回の注目は、テック株の公共事業性の確認にあるとも言われています。人々はそのビジネスモデルの盤石さを魅力に思い、困難な経済環境下でも成長を続けるだろう、という見通しをもち始めています。この点だけでいえば、テックというのは表面的なものであって、ビジネスのより根幹たる部分はテックでない要素でしっかり固められている、そんな印象を受けます。
それこそが今回の“テックバブル”の深層にある部分なのかもしれず、逆にいえばバブルではない、ということになるのでしょうか。
買いが買いを呼ぶ、テックバブルの様相
もともと新型コロナウィルス流行前もテック銘柄に資金が流入しやすい状況は続いていました。ただ、新型コロナウィルス流行をきっかけにテック銘柄も相応に下がった後、劇的な上昇基調への変化を遂げています。
企業サイドも株式分割を行うなど、株高が続く中でも小口投資家が購入しやすくしたことで、買いが買いを呼ぶ展開になっています。例えば米株式市場でも、GAFA+マイクロソフトだけでも時価総額に占める割合が史上最高となっており、投資マネーが集まっていることが伺えます。
テスラの株式分割
米電気自動車(EV)メーカーのテスラ は2020年8月11日に普通株1株を5株にする株式分割を取締役会で承認し、発表しました。狙いは社員や投資家による購入を促進することにあると言われています。
アップルの株式分割
同じく米アップルも2020年7月30日に普通株1株を4株にする株式分割を発表しており、「買われ過ぎ」を示す指標も出てきています。
両者の株式分割後の取引は2020年8月31日にスタートし、大幅な株価上昇を記録しています。成功例を目にして他のテクノロジー企業も追随するのでは、という見方もあります。
テックバブルは弾けるか
投資マネーを惹きつけてテックバブルの様相となるとき、次に焦点となるのはその投資マネーが引き揚げる瞬間です。これはいつか必ず起こることですが、一気に起こらなければ“バブルが弾ける”ことにはなりません。
今回のテックバブルは投機買いもさることながら、粘着性のある長期の投資資金が入っていることが予想されるため、バブルの崩壊には繋がらないという意見もあるようです。
一方で、足元はテック株以外に買うものがないからであって、経済が回復し、その他の株式の魅力が戻ってくるのであれば、いずれ資金が引き揚げると予想する向きもあります。
また、そもそもバブルと呼べるような状態になるのか、あるいはなったのかは後から振りかえってみて初めて分かることなので、今はまだ時期尚早なのかもしれません。それでも株価上昇のスピードは早すぎるような気もしないではないですよね。
株価急落は一社だけなのか、あるいは市場全体に波及するのか、いやそもそも起こらないのか、それは誰にも分かりません。