今回は「失敗しないプライベートバンクの選び方」ということで、いくつかプライベートバンク選びのポイントを挙げてみたいと思います。
1 銀行ブランド
プライベートバンクには、スイス系、アメリカ系、イギリス系など出自があり、また国際事業を展開しているかどうかも異なってきます。名前が知れ渡っていることはブランド力として非常に重要であり、入り口のスクリーニングとしては有効です。
ただし、プライベートバンクの場合、事業の健全性の観点からすると、幅広く事業をしすぎず、プライベートバンクとしての本分に忠実なところ、一般には名前が出にくいが業界の人に聞けば出てくるところが真のブランドとして認識されていることがあります。
プライベートバンクも銀行である以上、合併や買収の歴史もあるため、単に銀行名だけで判断し切れない面もありますから、銀行ブランドだけで判断するのは避けたいところです。
2 最低預入金額
一番明確な判断基準としては最低預入金額がいくらかになります。当然預入予定額がこれに満たなければ選択肢にもなりません。また、ギリギリ基準をクリアしていたとしても背伸びをしすぎないことは大事かもしれません。ご自身の資産状況に合わせたプライベートバンクを選ぶことが大切です。
最低預入金額の設定にあたってはプライベートバンクとしての事業戦略が垣間見えることもあります。より大口の顧客に特化したいと考えているのであれば最低預入金額は高いでしょうし、その基準も歴史的にそうであったかどうかも重要です。プライベートバンクのスタンスが頻繁に変わっているようであれば最低預入金額で口座開設をすることでデメリットになり得るかもしれません。
3 担当プライベートバンカーとの相性
プライベートバンクサービスはオンラインだけではないところに価値があります。そのため、顧客に付く担当のプライベートバンカーが誰になるかによって提供されるサービスとその質が変わってきます。プライベートバンカーの経験や知識はもちろん、性格にいたるまで、可能であれば知っておくことが優れた関係を築く上で非常に大切です。
担当のプライベートバンカーとは長い付き合いになりますから、直接顔を合わせることも大切ですし、家族ぐるみの付き合いになることもありますから、年齢や性別もひょっとしたら気になる要素でしょう。
英語が堪能であればもちろん外国人の担当者でもいいかもしれませんが、多くの日本人は日本人のプライベートバンカーを好みます。やはり、母国語である日本語で全てが伝えられた方が自分にあったサービスを受けられると感じるからですね。
4 資産運用サービス
プライベートバンクは金融機関ですから、最も肝心なサービスは資産運用です。各プライベートバンクによって資産運用の方法や提供商品の得意分野は異なってきます。とはいえどのような手段も“あったらいいもの”ではあるので、ご自身でどのような運用方法を望むのか、という点は可能であれば事前に絞り込んでいた方がプライベートバンク選びはしやすくなるでしょう。
取扱商品でいえば、社債などの債券、現物株式はもちろん、投資信託やヘッジファンド、プライベートエクイティファンドなどもあります。運用スキームでいえば、レバレッジをかけたりオフショア法人を使った投資ストラクチャーの構築を行ったりもするでしょう。
5 口座開設要件
どこのプライベートバンクにしようかと色々考えたところで、実はプライベートバンクの口座開設においては審査があるので審査に通らなければどこのプライベートバンクにも口座を開くことはできません。ただ資金があるだけではダメなのです。
先に述べた最低預入金額も一つの基準ですが、あとは日本居住者を受け入れていない、他国居住者を受け入れていない、法人口座は開設できない、金融資産総額の基準が別に存在する、などです。プライベートバンクに限りませんが、例えば反社会的勢力と関わりがある、政府高官などリスクの高い顧客である、預入資産の出所が分からないなどのケースは本人確認(KYC)プロセスで弾かれてしまう可能性もあります。選ぶ側から選ばれる側に変わる瞬間なので、しっかりと書類を揃え、そして説明を行った上で、口座開設に臨みたいものです。
失敗しないプライベートバンクの選び方
プライベートバンク検討にあたってのポイントは以上で挙げたものが主ですが、多くのことは口コミやネットの情報だけで分かるものではありません。実際にフタを開けてみないことには始まらないのです。
ただ、予めチェックすべきポイントを認識できているかどうかは非常に重要です。プライベートバンカーも営業パーソンですから、上手いこと言ったり、お酒を飲んで誤魔化したりということは起こり得ます。
口座開設したはいいけれども満足のいくサービスは受けられていない、というケースは後を絶ちません。よくよく検討をした上でお付き合いを始めることは大事ですし、優秀なプライベートバンカーほど顧客が最初にじっくり考えるべきであることを知っています。その意味でも焦ることなくじっくりと、そしてとことん話すことが大事になってくるでしょう。