投資家の多くは、全てを自分で調べ、そして全てを自分で意思決定し、そして自分でその投資の責任をとる、ということになるのか、ということに悩む人が多いようです。なぜなら、調べるときには他人からアドバイスをもらい、そして意思決定をするにも他人からアドバイスをもらうのに、投資の責任を他人に押しつけるのはなぜか許されないからです。
こうした、投資アドバイスと投資自己責任論のジレンマについて、少し噛み砕いてまとめてみたいと思います。
投資の意思決定主体
いや、そもそもこうして議論してみたところで、投資の意思決定主体は投資家自身だ、ということは事実であり、そしてそれを予め受け入れている人も多いです。ただ、誰か、あるいはどこかに運用をお願いする、ということ自体はいつでも発生しますから、お願いした以上、投資の意思決定に口を挟まない、あるいは挟めない、というケースがあります。
このような場合、資産運用にあたっての意思決定を二段階に分けて考えるべきでしょう。
1 投資をするか、しないかを決める
2 何に投資をするのかを決める
の二段階です。
1については、いつ何どきも投資家自身であることは言うまでもないでしょう。ご自身のお金なのですから。
ただし、2については様々な意思決定が関わってきます。自分で銘柄を探して決める場合もあれば、証券会社やプライベートバンクと話をして推奨銘柄をもらうケース、あるいは運用一任契約を結んで任せてしまうケースなど様々です。
投資自己責任におけるスタンス
投資は自己責任、とよく言いますが、だからと言って他人に投資アドバイスを求めてはいけないということはありません。ただ、この自己責任論を投資家としてどう受け止めるか、というスタンスに関しては様々だと思います。
1 他人が意思決定したことの責任は取れない
このスタンスの方は、自分でとことん調べ上げ、理解ができていない部分がない、という状態で投資に臨む人です。
実際、投資に関する多くの情報は公開情報ですし、ネットでも手に入ります。わざわざ店舗に言って「何がいいですか」と聞くことにさほど意味はないかもしれません。
自分で調べ上げている以上、自分が知らなかった情報があれば、これは自分の調査不足です。ここに他人が入って「これがオススメですよ」などと言おうものなら、「他人から薦められたから選んだ」ということになってしまい、何かあったときにその他人に責任をなすりつけたいと感じてしまうのではないでしょうか。
2 本業が忙しくて、投資の責任のことまで考えられない
自己責任であることは承知しつつも、その責任を感じなくて済むほどに投資のことを考えられない人は多いようです。資産家として有名な方は同時にバリバリの実業家であることも多く、気づけば貯金ばかりが増えていて、運用に回ることがあまりないかもしれません。とはいえ、運用していないという事実には向き合いたいので、本業との兼ね合いから投資の自己責任よりも他者に任せることを優先する、という決断をするようです。
投資のアドバイスの質的変化
さて、投資自己責任論が世の中に普及すれば、投資アドバイスの価値は減っていくような気もしないではないです。実際、「貯蓄から投資へ」という世の中の流れに乗った人たちは、自分で投資のイロハを学びつつも、適切なアドバイスは受けていないこともよくあります。
かつて、投資のアドバイスとは、オススメの金融商品銘柄を売る、ということに終始していました。しかし、近年はクライアント自身の金融知識を高めるようなアドバイスをすることに質的に変化してきています。
継続的に信頼できる人からアドバイスを受けることも然り、あるいはワンオフで色んなアドバイスを受けることも然りです。ただし、ワンオフのアドバイスにおいて、自分自身の経済環境や投資状況という投資における重要ファクターを加味した上で、適切なアドバイスを受けられるか、というのは正直不透明です。おそらくかかりつけ医のごとく、何かあったら相談する、という人の方がより安心はできるかもしれませんね。
お抱えの投資アドバイザーに意味があるか
かかりつけ医、という話をしましたが、実際、クライアントの投資経験などのプロファイルはお医者さんでいうカルテに近いものがあります。定期面談の中で蓄積されたクライアント情報を見ながら、あるいは頭の中にインプットされた情報を思い起こしながら、投資アドバイスは行われます。
また、資産家であれば様々な儲け話や投資話が持ち込まれるため、“あなただけ”あるいは“今だけ”の耳寄り情報として囁かれると、一人で判断してしまう人がいますが、気軽に問い合わせができる人がいれば、頼りになりますよね。
医療の世界にセカンドオピニオンがあるように、投資にもセカンドオピニオンがあってもいい、とは言えるかもしれませんね。
アドバイスの「質」を評価する時代へ
そうはいってもアドバイスを貰えばよいということでもありません。やはり、得るアドバイスにも質が伴います。
例えば、アナログなアドバイスとデジタルなアドバイスを考えてみれば、対面で受けられるアドバイスもあれば、チャット機能だけで対応するもの、あるいは共通のプラットフォームでコミュニケーションが行われるもの、インタラクティブなもの、匿名なもの、実に様々です。
また、聞かれたときにしか答えてくれないアドバイスなのか、何かソリューションを見つけて相手から自発的に提供されるソリューションなのか、は違ってきます。
本業で忙しく、連絡が取れないタイミングが多い人は、アドバイスといいつつも、管理人のごとく、放っておいてもやってくれる人がいいのかもしれません。
様々なタイプのアドバイスがあるのであれば、クライアントにとって最も快適な病院=アドバイザーを探すのがきっとよいのでしょう。距離的なメリット、人柄や専門知識、話し方など、様々な点を加味して、最もフィットする人に出会ったとき、お抱えの投資アドバイザーとして採用すればよいのです。