テレワーク・在宅勤務ETF(WFH)の誕生と投資メリット・リスク

テレワーク・在宅勤務へのシフトに呼応して、関連ETFが誕生!

2020年は新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大により、働き方そのもののが改革を余儀なくされています。これまでもテレワーク・在宅勤務という概念はありましたが、今後は世の中のトレンド、引いてはスタンダードへと変化していくことが予想されています。パンデミックをきっかけに、テレワークを恒久的なものとする計画が進んでいるのです。

こうした社会の変化を受けて、2020年6月25日、米国株式市場にて、テレワーク・在宅勤務をテーマとするワークフロムホーム(Work From Home, WFH)ETFが上場しました。シンボルティッカー:WFHのこのETFを提供する会社はDirexion社ですが、大手のBlackrock社も、上場申請を出しているため、いくつかの選択肢が今後現れてくるでしょう。

WFHの銘柄構成は?

WFHに関する目論見書やファクトシートなどは公式サイトからダウンロードできます。

WFHは「Solactive Remote Work Index」に連動することを目指しており、主要株式インデックであるS&P500に対してアウトパフォームすることが期待されています。

連動インデックスはドイツの金融指数プロバイダーであるSolactive社が出しており、テレワーク関連分野として、

  1. クラウド技術
  2. サイバーセキュリティ
  3. オンライン・プロジェクト及びドキュメント・マネジメント
  4. リモート・コミュニケーション

の4分野を挙げ、分野毎に10銘柄、計40銘柄の均等加重平均により株式指数が構成されます。

具体的な銘柄を見てみましょう

  • 1 Twilio(クラウド・コミュニケーション)
  • 2 Inseego Corp. (5G、クラウド・ソリューション)
  • 3 CroudStrike Holdings(クラウド・サイバーセキュリティ)
  • 4 Avaya Holdings(ネットワーク機器メーカー)
  • 5    Okta(ID管理、認証システム)

以上は上位銘柄ですが、意外と知られていないような気もします。それ以外だと

  • 6 Zoom Video Communications(オンライン会議ツール)
  • 7 Microsoft Corporation(ソフトウェア開発)
  • 8 Amazon.com Inc.(クラウドコンピューティング)
  • 9 Alphabet Inc. (リモートデスクトップ)*Googleの親会社
  • 10 Oracle Corporation(クラウド・情報システム)

なども含まれていることが確認できます。

WFHへの投資メリットは?

分散投資

WFHはETF(上場投資信託)ですから、株式です。ただし、直接株式を購入するのと異なり、様々な企業に分散して投資をすることが可能です。しかもその分散はあまりコストをかけずに自動的に行われるため、分散を維持しやすいと言えるでしょう。

手軽さ

ETFの良いところはメジャーな株式市場に上場していることであり、これによりアクセスできる投資家が非常に多いことです。通常の投資信託であれば、オープン型であってもマーケティングなどにコストをかけねばならず、世界中の人に知られることはありません。WFHはもちろんプラットフォームによっては対応が未了のところもあるかもしれませんが、取引は簡単に、そして売り買いも非常に手軽に行うことができます。

テーマ型

WFHはいわゆるテーマ型のETFに該当しますので、企業の財務諸表などを見ずに、ざっくりと社会のトレンドに沿って成長するであろう企業に投資をするのには適しています。個別の企業の判断はできない、あるいはもっと広く、しかしテーマを持って投資を行いたいという人には向いているでしょう。

WFHへの投資リスクは?

AIによる銘柄選択

WFHはヒトではなく、AIによる銘柄選択が行われており、これはまだまだ確立した方法とは言えません。また、これに対して年間0.45%ほどのコストがかかることになりますが、その分、銘柄選択が適切に行われるのか、というところはまだまだ上場したてのETFなので分かりません。

構成銘柄の変更

もしWFHの特定の企業に期待を持っていたとしても、指数の構成銘柄に選ばれるかどうかはその時々によって異なるため、気付いたら銘柄が含まれていなかったということも十分あり得ます。テーマさえ間違っていなければどの企業でも良い、という人の方が向いているとは言えそうです。

構成銘柄の少なさ

WFHは構成銘柄数では先に述べたとおり40です。S&P500はその名の通り500の銘柄で構成されているので、40というのが多いのか少ないのか。どちらかと言えば少ない方に入るでしょう。いくら分散が効くとはいえ、テーマ型である以上、構成銘柄は似たような動きをすることが予想されます。果たしてそれで40という数字に分散効果があるのか、投資家の判断は分かれるでしょう。

ETFとしての人気

ETFは株式でありつつ、直接投資ではありません。したがって株価が上下すること以外に、投資信託としての資金の流出入や運営の健全性などが、投資パフォーマンスに影響を与える可能性があります。テーマ型ETFの場合、人気があるうちは資金流入ばかりなので悪くないのですが、テーマが廃れた場合、あるいは他のETFが優れていると判断された場合は投資資金が急速に出ていくため、直接株式を買った場合よりも投資家へのコスト転嫁が大きくなる可能性があります。一時的な人気ではなく、継続的に人気を持つ歴史あるETFになるかどうか、も注目すべきです。

テレワーク・在宅勤務関連株式への直接投資も視野に

WFHの構成銘柄は上場銘柄ですから、そもそもテレワーク・在宅勤務関連株式を直接購入することはハードルとして高い訳ではありません。もしWFHをきっかけに関連株式に興味を持ったのであれば、WFHの構成銘柄も参考にしながら、気に入った企業の株式を買う、あるいは不必要と思う企業を外して買う、といったこともできるにはできます。もちろん、このあたりはリスクやバランスとの兼ね合いですので、よく調べ、よく考えて投資活動に移すことが大事でしょう。