永久債とは?
永久債(perpetual bond)とは、元本返済に関する満期の規定がない債券のことで、企業により発行される社債の一種です。
通常、社債というのは、満期まで一定の頻度で利子が支払われるとともに、満期を迎えると元本が返済されます。
したがって、満期のない永久債の場合、発行体が存続する限りにおいて、永久に定められた利子が支払われることになります。
ただし、現実には一定帰還後に償還(買い戻し)可能となるオプション(コールオプション)が付与されているケースが多く、この場合は元本が返済されます。
永久債への注目の高まり
満期のない債券を債券と呼ぶことに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、現実的な対応としてはコールオプションの期日(買い戻しのタイミング)で償還が行われることが一般的なので、その意味では20年債や30年債のような、満期がもともと超長期である債券の方が満期のなさを実感しやすいだろうとは思います。
どうしてこのような債券が発行されるのか、という点に関して言えば、永久債を多く発行する金融機関側の事情によるところが大きいと言えるでしょう。形式上満期がないことによって、債券発行によって調達した資金は、“株式資本に近い”扱いをすることができ、金融規制上、有利な項目として算入できるようになるからです。
とはいえ、やや複雑な特徴を持っているために、一般投資家に販売されることは少なく、個人の場合であれば、ごく限られた富裕層に向けて提供されることが多いようです。
永久債への投資リスクをどう考えるか
リスクの特徴① 価格変動が大きい
債券は安全資産である、という認識を持つ投資家は多く、実際株式に比べれば安定した値動きをします。ただ、永久債に関して言えば、株式と債券両方の性質を持つ、ハイブリッド債の一つであると考えることができ、それゆえに価格変動が大きくなります。満期がないために、中途で売却することも想定されるでしょうから、その場合、価格が大きく動いて元本割れすることのないように売却タイミングは十分に検討しましょう。
リスクの特徴② デフォルトリスクが大きい
債券におけるデフォルトリスクを考える際、外部格付けを参考にする投資家は多いと思いますが、永久債の場合、投資適格級(BBB以上)の格付けを持つことはあまり多くありません。また、永久債の中には劣後条項を持つ場合や、株式への転換が可能になる条項が盛り込まれているケースもあります。そもそも、いざとなれば返済しないことも視野に入ってくるからこその永久債なのです。
リスクの特徴③ コール(中途償還)される可能性がある
償還されることは何も悪いことではないのですが、満期がないと思って投資をしている場合には好ましくない場合があります。
コールされたタイミングでは他の債券にまた投資をすることを考えねばなりません。また、満期とは異なり、コールされないという可能性を残しながら債券を保有し続けなければならないのです。
仮にコールされる場合は、元本である額面100で償還されることになりますから、もともと100以上の価格で購入していた場合、元本割れすることもありえないわけではないです。
永久債の投資リターンをどう考えるか
リターンの特徴① 利率は通常の社債よりも高い
永久債のリスクは通常の社債よりも高いことが感じていただけたのではないかと思いますが、リスクに見合うリターンが提供される金融市場では、永久債の利率は通常の社債よりも高く設定されることが多いです。
通常の社債が1〜3%の利回りだったとしたら、永久債は4〜8%、高ければ10%くらいあるものもあります。
リターンの特徴② 原資回収期間を考慮する
債券に投資を行う場合、表面利回りと満期利回りに注目することが一般的ですが、永久債への投資の場合は、原資回収期間を考慮することも有効です。
例えば、年間10%のリターンであれば、10年間で100%ですので、原資回収期間は10年です。原資が回収できているので、その後はある意味ボーナス期間と捉えることもできるかもしれません。
リターンの特徴③ コール日までの利回りを目安にする
永久債の場合、コール日があればコールされる(償還される)ことが一般的だという話をしました。なぜかというと、債券を償還できる能力があることを市場に示すことができるからです。
逆にコールをしないということは、返済能力が落ちているのではないかという懸念をもたらす可能性があります。もちろん、そもそもコールするかしないかは発行体のオプションなのですが、こういった勘繰りをされてしまうことから、コール日にコールをすることは一般的には良い傾向であると言えるでしょう。
したがって、満期がないといいつつも、コール日が満期であると認識して債券利回りを計算し、投資するに値するかどうかを検討する必要があります。
永久債という言葉に騙されないことが大事
ここまで見てきて気づいた人も多いと思いますが、永久債という言葉は半分名ばかりです。実態としてはそれほど満期の長い債券とは言えないことの方が多いです。超長期の債券をもし探しているのであれば、恐らく20年債や30年債といった満期が実際に長い債券を見つける方がニーズには合致しているのだろうと思います。
ただし、リスクをしっかり理解した上であれば、より魅力的なリターンを提供してくれる永久債は投資対象としては有力でしょう。プライベートバンカーから買い推奨をされた場合には、詳しい条件まで確認した上で、検討してみると良いかと思います。