CoCo債券(偶発転換社債)への投資リターンとリスクを探る

CoCo債券(偶発転換社債)とは?

CoCo債券というのは、Contingent Convertible Bonds(偶発転換社債)の略で、いわゆる“ハイブリッド証券”に属するものです。

ハイブリッド証券とは株式と債券の間の性質を持つ証券のことで、CoCo債券の場合は、「ある特定の条件=トリガーを満たすと、株式に強制的に転換される、あるいは元本を削減される性質を持った債券」とされています。

ここでの、ある特定の条件、すなわちトリガーとは、「自己資本比率が一定水準以下に下がること」を指しています。自己資本比率が下がるとき、というのは一般的には、経営のリスクが上がっているときですから、そのような場合に、安全資産と認識される債券から、リスク資産と認識される株式に転換され、元本の返済が約束されなくなる、というものです。

通常、元本の返済がなされないのは会社が経営破綻したときですが、CoCo債券の場合は、そうでなくてもトリガーが引かれれば、元本の返済がなされない可能性が出てくる、ということになります。

一般的にはCoCo債券はヨーロッパの金融機関が主に発行しています。それは欧州の金融規制に対応するため、というのがメインの理由だからです。

トリガーの水準は、「自己資本比率、より正確には中核的自己資本(CET1、セット1)比率=5.125%」とされることが多いのに対し、実際のCET1比率は10%以上ある銀行がほとんどなので、何もバッファーがない状態で経営をしているわけではなく、規制当局側もこの水準に抵触しないよう見張っているので、トリガーに抵触する可能性自体は非常に低いと言えるかもしれません。

CoCo債券への高まる注目

CoCo債券に投資をするのは富裕層が多いのですが、それはなぜなのでしょうか。

既に触れたとおり、CoCo債券はやや複雑な証券に該当するので、投資家としての知識や経験も必要になります。また、多くは2000万円以上から投資ができるものなので、一般の人には手がつけづらい金額であることも挙げられます。

一方、CoCo債券はハイリスク・ハイリターンだと言われています。債券にも種類がありますが、普通債券(シニア債)に対して、CoCo債券は、発行企業がデフォルトした場合の弁済順位(返済される順位)が劣後(後回し)するため、よりリスクが高くなります。

ただし、その分発行企業は投資家への見返りとして高い利息(クーポン)を提供しますので、魅力的な投資になり得ます。

CoCo債券の歴史はまだ浅く、2010年頃から欧州の金融機関を中心に発行が広まったものです。リスクが高いと言いながら、リーマンショックを乗り越えた経験はないわけです。したがって、普段はリターンが高いと思っていていいにも関わらず、リスクが顕在化したときに悲惨な結果となるかどうか、が全く予想できません。

それでもCoCo債券への投資は一般的になりつつあり、CoCo債券に投資をするファンドまで登場しているのは注目でしょう。

CoCo債券への投資リスク

CoCo債券は比較的流動性が低く(売買が少なく)、頻繁に取引をするのには向いていません。どちらかといえば、長期で投資を行うタイプの投資家に向いていると言えるでしょう。リスク特性から、債券価格自体の値動きも比較的大きくなる傾向があります。

現在は、CoCo債券を多く発行する銀行セクターにとっては金利も低いので経営環境があまり良くありません。にも関わらず、債券市場そのものも資金流入によって過熱感があるため、本来享受すべき“高利回り”も存在しませんから、高値掴みになる可能性は非常に高いとは言わざるを得ません。

CoCo債券への投資リターン

社債の中でも利回りが高く、富裕層だからこそ買える、という意味ではタイミングが良ければ最高の投資になりそうです。

通常、債券で利回りを求める場合は、格付けの目線を下げて、例えば投機的格付け(BBB以下)の中で銘柄をピックアップします。逆に、格付けの目線を下げずに利回りを求めようとすれば、CoCo債券のような複雑な証券にぶつかります。

気をつけたいのは、CoCo債券の場合、固定利息ではなく、あるときに固定から変動に変わってしまったり、期限前償還となるコール期日が設定されていたりする場合が多いことです。コール期日が近いのであればそれを加味して投資リターンを想定しなければなりません。

CoCo債券はハイリスク・ハイリターンか

投資家にとっては、CoCo債券もまた債券であるという事実が安心感を与える面もあるようです。それに、CoCo債券に出会うのは投資家自身のせいでもあります。なぜかというと、

①投資家が利回りを求めるとき

②投資家が他にない複雑な商品を好むとき

によく提案されるからです。

また、債券の場合その後の管理が楽なので、忙しいプライベートバンカーなどもこの手の商品はその“手離れの良さ”から選ばれます。大口客に対する面白い金融商品として、話のネタとしても好かれるからですね。

ただし、CoCo債券はどちらかといえばハイリスク・ハイリターンな商品です。投資家自身の投資に対するスタンスと合わないのであれば手を出すべきではないものですね。投資を検討される場合にはセカンドオピニオンをとるなど、入念に検討が必要です。

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