資産運用は先が見えないと割り切る
しっかり資産を守って、あるいは築いて人生を歩みたいと思う人は多い一方で、運用を行えば「運用成績に人生を左右されている」と感じる人が増えてしまうようです。
資産形成はしなければならないと思いつつも、すぐに資産が爆発的に増えるわけでもなければ、いくらになったからと喜べるものでもなかったりします。
目に見えない成果が続くと、人は資産形成から途中で脱落してしまいます。あるいは目先の利益のために資産を取り崩してしまうかもしれません。例え一時的に増えたとしても、その増えた資金でリスクテイクをするのが怖くなったりします。
したがって、運用成績でもって資産運用に対する期待が充足されることはないのだと考えるのが自然かもしれません。
少しの間満足した運用成績であっても、あぁすれば良かった、こうすればなどと後からケチをつけ始めるのが人間の性なのです。そして、ふと先の見えない資産運用の未来をまた考え始めると、不安で不安でたまらなくなるのです。
何も良いことはありませんし、未来をあなたが決められるわけではないのです。資産運用は先が見えないのだと割り切りましょう。
ゴール=金額目標ではない
この記事を読む人の多くは、資産運用に興味があって、資産を増やしたい、あるいはしっかり守りたいというニーズがあるのではと思います。資産運用におけるゴールは?と聞かれれば恐らく金額目標のことをイメージする人がほとんどなのではないでしょうか。
ゴールベースアプローチにおける、”ゴール”とは金額目標のことではありません。それにただ資産を形成しましょうというものでもありません。ゴールとは、
あなたが人生を通じて、あなた自身のため、家族のため、あるいは社会等のため資産の形成と取り崩しを前提としてやっておきたいこと
です。例えば、引退後は田舎で隠居生活を送りたい、障害を持つお子さんのサポートを確保したい、海外に別荘を持ちたい、などです。表面的には人生の目標ですが、その裏付けには必ず資金が必要だ、というのがポイントであり、その金額的価値を推定しておくことになります。
ゴールを決めれば自ずと資産管理の仕方が見えてくる
例えば、1億円で家を建てたいと思っている人が、毎月10万円を積み立てているとしたらどうでしょうか。100年経っても家が建つことはありませんね。
また、5年後に1,000万円が必要であることが分かっているのに、10年後に満期がくる定期預金を組むことは正解ではありません。つまり、ゴールを決める作業をすることで、自ずとどのような資産管理をすべきかが紐付きで決まってくるのです。
一方で、例えばFXや株式などを行なって短期的に利益を得たいときもあるでしょう。これを排除しているわけではありません。ただ、資産のうちそういった投機的活動が大半を占めてしまっては、目指すべきゴールから遠ざかってしまうかもしれません。
したがって、資産の中でもゴールと紐づいたコアの部分と、そうでない部分を分けることも大事になってくるのです。
ゴールベースアプローチにアドバイザーは必要か
アドバイザーを通じて得られるもの
金融アドバイスを行うアドバイザーが提供する”価値”は様々です。これまでは、資産の配分割合を決めたり、ファンドを決めたり、あるいはリバランスを行なったりといった「ザ・資産運用」というエリアだったのではないでしょうか。
確かにそれも重要であり続けますが、これからの時代に生き残っていくアドバイザーが提供するのは、「投資行動のコーチング」や「ゴールの最適化」だろうと言われています。つまり、一見すると資産運用と直接関係がなさそうな分野です。
アドバイザーの選別は重要
アドバイザーはいわば投資メンターのような存在であると考えられますが、一方で、「この投資をやれば勝てる」といった投資の指南をしてくれる存在であってはいけません。
顧客と同じ目線に立ちつつも、客観的な視点で顧客を導くべき存在なのです。ゴールベースアプローチにおけるゴール設定の主役は当然ながら”あなた”です。アドバイザーがゴールを決めるわけではありません。
明確なゴールを予め持っている人は少ない
難しいのは顧客側が明確なゴールを持っていることは限らない、という点です。それにゴールは時とともに変わるかもしれません。
人生のゴールはあったらあったでいいような気もしますが、そもそもそんなに具体的に決まっているはずがないのです。決められるはずもないのです。そんなこと言ったらないゴールを目指しているようなものじゃないか、と思う人もあるかもしれません。
では、決め撃ちした方がいいのか。
ゴールベースアプローチでやりたいのは、目標に向かうプロセスを明らかにし、その到達度合いをきちんと計測することです。ただし、そのゴールとは包括的なものであるべきであって、車を買う資金、といった具合に限定しすぎることはよくありません。車を買うためだけにあなたが生きているわけではないからです。
この漠然とした状況の中で、アドバイザーが果たすのは、一定の頻度のコンタクトや長年の付き合いを通じた、「あなた自身への理解」です。もちろん他人なので完全には理解できないかもしれませんが、他人だからこそ客観的にあなたの変化を感じ取ることができます。
ゴールが変わったと思えばそれに応じて資産管理のあり方を変えていくことを提案してくれることでしょう。色々書いてきましたが、結論から言えば「人生のパートナーとなるアドバイザーを見つける」ことが重要であり、もしそれを探し始めていないのであれば始めてみるのが、スタートラインかもしれません。